バッテリーが上がってしまった時の対処方法
バッテリー上がりの前触れを見逃すとある日突然バッテリー上がりに
12V鉛バッテリーは、車やバイクの始動時に必要な電力を供給する役割を持っている部品で、運転中以外に消耗や劣化が進んだり外気温の違いにより出力が変動します。
そのため定期的な点検やメンテナンスを行っていないと突然のバッテリー上がりに見舞われます。
(運転条件によりますが一般的なバッテリー寿命は2~3年です。)
バッテリー上がりの症状
- 夜間走行しているとヘッドライトがいつもより暗い感じがする。
- 道を曲がる際にウィンカーを出しても点滅速度(カチカチ音)が普段より遅い。
- 最近、車をスタートさせようとしても、一回でエンジンがかからないことが続いている。
- 車の調子がおかしいなと思っていたら、ある日、突然、エンジンがかからなくなってしまった。
スイッチをスタート位置まで回しても、ガッガッという音がするだけでエンジンがかからない。
ドライバーの皆さんの中には、このような経験をされて困った方が多くいるのではないでしょうか?
この状況で考えられる一番多い原因は、バッテリー過放電によるバッテリー上がりやバッテリーの寿命による出力電流の不足です。
セルモーターを回してエンジンをスタートさせる電流(クランキング電流)を、バッテリーが出力できない状態です。
スターターモーターが、クランクシャフトを回転させるイメージ
スイッチをスタート位置に回すと、ソレノイドが動いてピニオンがクランクシャフトに直接組み付けられているフライホイール(リンクギア)にはまります。
バッテリーが正常な場合は、スターターモーターが回転しクランクシャフトを回転させてシリンダー内のピストン運動(吸入,圧縮,膨張,排気サイクル)を開始させることができます。
バッテリーがソレノイドを動かす出力電流が出せない場合やピニオンが出せても、フライホイール(リンクギア)に接続後にクランクシャフトを回転させる電流が出力できない場合は、エンジンはスタートできません。
スイッチをスタート位置まで回しても、ソレノイド(電磁石)にピニオンを保持する電流が流せない場合は、ピニオンの出入りするカイカチ音やカツンカツン音でエンジンがかかりません。
スイッチがスタート位置以外の状態(図1)
スイッチがスタート位置の状態(図2)
バッテリー上がり(過放電)とバッテリー寿命
バッテリー上がり(過放電)とバッテリー寿命の両方とも、バッテリーの出力電流が不足してエンジンがスタートできない状態になっています。
バッテリー上がりは、長時間の室内灯の消し忘れによる過放電(陽極は酸化鉛から硫酸鉛へ変化 陰極は鉛から硫酸鉛へ変化 電解液は希硫酸から水へ変化)や毎日の短距離走行による充電不足などで、蓄電量が不足して、一時的にバッテリーが放電できない状態です。
これに対して、バッテリー寿命は、バッテリー内の電極板の経年劣化やサルフェーションの発生でバッテリーの蓄電能力が低下しバッテリーが放電できない状態です。
いずれの場合も、バッテリーは必要な電力を放電できないためにエンジンスタートができません。
この状態は、いずれも、他の車や専用のバッテリースターターとブースターケーブルで接続し電力を分けてもらうことでエンジンスタートすることができます。(この方法をジャンプスタートと呼んでいます。)
バッテリーの充電
エンジンがスタートすると、車は、オルタネーターによりバッテリーを充電しようとします。
過放電によるバッテリー上がりの場合は、電極の劣化はありませんので充電することで放電の逆の化学反応(陽極は、硫酸鉛から酸化鉛へ変化 陰極は硫酸鉛から鉛へ変化 電解液は水から希硫酸へ変化し水素が発生します)が進んで電力を蓄えることができ放電ができるようになります。
過放電によるバッテリー上がりは、一般的に、ジャンプスタート後約1~2時間程度の運転による充電でエンジンを止めても問題がない程度まで充電されます。
これに対して、バッテリー寿命の場合は、電極の劣化が生じているため化学反応が進まず再び電力を蓄えることができません。このままではバッテリー上がりを繰り返すため、バッテリー交換が必要です。
バッテリージャンプスタート手順
バッテリージャンプスタートは、他の車や専用のバッテリースターターの力を借りて、とりあえずエンジンをかける手段です。
ジャンプスタートを行う際の注意
作業手順は簡単ですが、安全に作業をするためにも気をつけておきたいことがあります。
ブースターケーブルには、種類があるので、車種に合った製品を使う。ブースターケーブルの許容電流が低すぎると、作業中にケーブルが発熱して被覆が溶ける場合があります。(中型乗用車程度までは、許容電流が50~80A程度。2トントラックであれば、許容電流が100A程度。大型トラックや建機などでは200A程度が目安です。)
車が搭載するバッテリーには、出力電圧が12V、24Vの種類があります。救護車は、なるだけ同じ電圧のバッテリーを使用する車種を使います。
バッテリーの搭載場所を確認の上、ブースターケーブルが余裕をもって接続できる場所に救護車を止める。
車によっては、特別な手順を必要な車種があるので、ブースターケーブル接続前に取扱説明書を確認しておく。
(電動ロックされたトランク内にバッテリーを搭載している車の中には、指定の端子に救護車のバッテリーをいったん接続しロックを解除する必要がある車種やバッテリー端子とは別にジャンピング専用の端子がある車種があります)
ハイブリッド車や電気自動車は他の車からジャンプスタートできますが、救護車にはできません。
ブースターケーブル接続手順とエンジン始動方法
- バッテリーが上がった車のバッテリーのプラス端子に赤色のブースターケーブルをつなぐ。
- 救護車のバッテリーのプラス端子に、その反対側をつなぐ
- 救護車のバッテリーのマイナス端子に、黒色のブースターケーブルをつなぐ。
- バッテリーが上がった車の金属部分にその反対側をつなぐ。
- 救護車のエンジンをかけて、エンジンの回転数を上げる。
- バッテリーが上がった車のエンジンをかける。エンジンがかかったら、ブースターケーブルを接続した逆の手順で取り外す。
【注】接続方法や手順を間違えるとショートによりフューズが飛んだり感電する可能性がありますので注意して作業を行いましょう。
ポータブルバッテリースターターを準備しておく
バッテリー上がりが起こるときは突然で、ジャンピングを行おうにも救護車となってくれる車が近くにいなかったり、ブースターケーブルを持っていなかったりするケースがほとんどです。
そうなると、ロードサービスを呼ぶことになりますが、JAF非会員【*1】の場合や回数オーバーなどの使用制限で自動車保険に付帯するロードサービスを使用できない場合は、有料サービスをコールする必要が出てきます。
こんな時、役に立つのが、ポータブルバッテリースターターです。最近では、防災時にはライトやスマホの充電にも使用できる小型で大容量を出力可能な製品が数千円程度で購入できます。
バッテリー上がりでロードサービスを有料で呼ぶことを考えると常備しておいてもよいのではないでしょうか?
【*1】JAFは年会費4,000円で会員になれます。会員の間は何度でもロードサービスに対応してもらえます。ただし非会員でも対応依頼はできますが、その場での入会はできず有料対応となります。